向精神薬の種類と抗精神病薬との違いについて
うつ病をはじめ、パニック障害、統合失調症、不眠症やADHDなど、精神病(精神疾患)にはいろいろな種類があります。
精神病の薬物治療のときに処方される薬の「向精神薬」や「抗精神病薬」という種類があるのですが、似たような名称であることもあって、何が違うのか、混乱してしまったり、よく分からないと感じる人も少なくないようです。
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向精神薬と抗精神病薬の違い
向精神薬とは、心の病気、精神に作用する薬全般を意味する総称です。
そして、抗精神病薬とは、向精神薬の1つの種類になります。
犬に例えるなら、向精神薬が「犬」という大きなカテゴリになり、抗精神病薬は「柴犬」とか「チワワ」と小さなカテゴリに当てはまる、と考えるとわかりやすいのではないかと思いました。
もちろん、向精神薬には抗精神病薬以外の種類の治療薬もあります。
向精神薬の種類について
心の病気に作用する薬全般を指して「向精神薬」といい、次のような種類があります。
【向精神薬の種類】
・抗精神病薬
・抗うつ薬
・抗不安薬
・睡眠薬
・気分安定薬
・精神刺激薬
抗精神病薬は、妄想や幻覚を改善する効果があり、主に統合失調症やうつ病の治療において処方されることが多い薬です。
抗うつ薬は、その名称とおり、うつ病の治療に使われることが多く、抑うつ状態の改善に有効な薬です。
抗不安薬は、不安や恐怖、緊張感を解消する効果がある薬で、神経症や心身症の薬物治療にもちいられています。
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睡眠薬は、不眠症などの睡眠障害やうつ病などの治療で処方されることが多く、睡眠の誘発や持続効果のある薬になります。
気分安定薬は、躁鬱病の治療薬としても処方され、躁状態の改善に有効的です。
精神刺激薬は、過眠症やADHDの治療薬としても使われ、精神機能や活動性の向上を目的として処方されています。
抗精神病薬の効果について
抗精神病薬は、向精神薬のうちのひとつで、かつて精神分裂病と呼ばれていた統合失調症、躁病、痴呆症などにも処方されています。
統合失調症などでみられる幻覚や妄想などの症状や、精神興奮状態をやわらげ、鎮静させる効果がある薬です。
抗精神病薬は、これまでの様々な研究から、大脳、脳幹、神経伝達物質ドーパミン、などに作用し、幻覚や妄想といった陽性症状に有効であると考えられてきました。
また、最近では、抗精神病薬は神経伝達物質セロトニンにも作用し、感情鈍麻、意欲低下などの陰性症状にも効果があることが分かってきています。
抗精神病薬の副作用としては、発汗、発熱、頻脈といった自律神経障害や意識障害を起こす副作用がみられますが、精神科の薬物治療においてとても重要な薬となっています。
精神病に効く薬はない、と思われていた
かつては「精神病に効く薬はない」とまで思われていて、精神病治療は、隔離病棟で世間から隔離し、隠蔽するという暗黒の時代もありました。
また、精神に作用する薬である向精神薬(精神病の薬の総称)が開発されるまでは、患者にとって苦痛を感じる治療法が中心でした。
その後、1952年にクロルプロマジンという物質がフランスで発見され、精神病の治療の効果を発揮し、日本では1955年に精神科医の小林司がレセルピンを使ったのが薬物療法の起源だといわれています。
向精神薬の歴史は60年程度と、まだまだ研究が新しい分野なのです。
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