犯罪者が多い、反社会性パーソナリティ障害と行為障害のチェック(診断基準)

犯罪者が多い、反社会性パーソナリティ障害と行為障害のチェック(診断基準)

反社会性パーソナリティ障害は、犯罪者に多いと言われているパーソナリティ障害(人格障害)のひとつです。また、子供にみられる行為障害(素行障害)=非行との関連性も深いとされています。

そこで今回は、反社会性パーソナリティ障害と行為障害の特徴や診断基準について、ポイントをまとめてみたいと思います。

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反社会性パーソナリティ障害とは?

反社会性パーソナリティ障害とは、法律や道徳、一般常識や社会的ルールを無視して、反社会的な行為を繰り返す人のことです。

具体的には、障害、窃盗、詐欺、暴行などの犯罪行為を行い、他人から金銭を奪ったりすることがあります。また、反社会性パーソナリティ障害の人は、些細なことで怒りやすい特徴があります。

反社会性パーソナリティ障害本人は、こうした反社会的な行動(犯罪行動など)をすることに対して、良心の呵責を感じることなく、平気で行います。他人に対しても冷淡で、共感や同情をすることもなく、反省や後悔もないのが特徴的です。

このように、反社会性パーソナリティ障害の人の中には、犯罪歴や逮捕歴がある人が多くみられます。

行為障害との関係は?

行為障害と反社会性パーソナリティ障害は深い関係があるといえます。というのも、反社会性パーソナリティ障害の診断基準の中に「18歳以上であること」「15歳以前に行為障害の証拠があること」というチェック項目があるのです。

行為障害とは、一般的にいうところの子供の「非行」のことです。暴行、恐喝、窃盗、破壊行為、家出、学校の無断欠席などが具体例としてあげられます。

反社会性パーソナリティ障害の人は、10代の子供のころから非行を繰り返し、補導された経験があることが、診断のためのチェック項目に入っているのです。

反社会性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)

最新の診断基準であるDSM-5では、「反社会性パーソナリティ障害」の診断基準は次のようになっています。子供や家族など自己チェックの参考にしてみてください。

また、反社会性パーソナリティ障害のチェック項目の中に、「15歳以前に行為障害の証拠があること」となっているので、行為障害(素行障害)の診断基準についても載せておきます。

【反社会性パーソナリティ障害の診断基準】

A. 他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以上で起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。
1)法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。
2)虚偽性、これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。
3)衝動性、または将来の計画を立てられないこと。
4)いらだたしさおよび攻撃性、これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。
5)自分または他人の安全を考えない無謀さ。
6)一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。
7)良心の呵責の欠如、これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことに無関心であったり、これを正当化したりすることによって示される。

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B. その人は少なくとも18歳以上である。

C. 15歳以前に発症した行為障害の証拠がある。

D. 反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。

(参照:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院)

【行為障害(素行障害)の診断基準】

A. 他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12ヵ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6ヵ月の間に存在したことによって明らかとなる。

▼人および動物に対する攻撃性
1)しばしば他人をいじめ、脅迫し、威嚇する。
2)しばしば取っ組み合いのけんかを始める。
3)他人に重大な身体的危害を与えるような武器を使用したことがある(例:バット、煉瓦、割れた瓶、ナイフ、銃)。
4)人に対して身体的に残酷であった。
5)動物に対して身体的に残酷であった。
6)被害者の面前での盗みをしたことがある(例:人に襲いかかる強盗、ひったくり、強奪、凶器を使っての強盗)。
7)性行為を強いたことがある。

▼所有物の破壊
8)重大な損害を与えるために故意に放火したことがある。
9)故意に他人の所有物を破壊したことがある(放火以外で)。

▼虚偽性や窃盗
10)他人の住居、建造物、または車に侵入したことがある。
11)物または好意を得たり、または義務を逃れるためしばしば嘘をつく(例:他人をだます)。
12)被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)

▼重大な規則違反
13)親の禁止にもかかわらず、しばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。
14)親または親代わりの人の家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが1回あった。
15)しばしば学校を怠ける行為が13歳未満から始まる。

B. その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている。

C. その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティ障害の基準を満たさない。

(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院)

◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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