自己愛性人格障害を治したい、克服のための治療のポイント

自己愛性人格障害を治したい、克服のための治療のポイント

「自己愛性人格障害を治したい」「自己愛性パーソナリティ障害を治療して克服したい」と思う人もいることでしょう。

自己愛性人格障害を治すためには、どのようなことが治療のポイントになるのでしょうか。また、注意すること、必要なことは、どんなことが考えられるのでしょうか。

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自己イメージのギャップが大きい

自己愛性人格障害には、①誇大的な自己が表に出る傲慢で横柄なタイプと、②誇大的な自己を隠す消極的で控えめな2つのタイプがあります。

あらわれる特徴や症状からみると、この2つのタイプが正反対のようにですが、実はコインの裏表のようなものです。①は理想化された存在な自己イメージ、②は非力で無価値な自己イメージですが、現れ方が違うだけで本質は同じなのです。

自己愛性人格障害を克服するためには、患者本人が、尊大な自己イメージと非力な自己イメージのギャップに気づくことが大切です。医師やカウンセラーなどの治療者も、自己愛性人格障害の患者さんがそうした方向へ進んでいけるようにサポートすることが求められます。

「早く治そう」とあせらないこと

自己愛性人格障害の治療は、あせらないことが大切です。

自己愛性人格障害の治療の方向性は「傲慢で尊大な態度」ととっているが、内面では「非力な自分」もあることに、患者本人が気づくことです。しかし、その気づきを、あせって急ぎすぎないことも大切です。

自己愛性人格障害の患者本人は「私が会社に適応できない人間になったのは、会社の管理方法に問題があったから」と強く思い込んでいます。そうした人に対して「あなたにも問題がある」と責めるのは望ましくありません。

急に「非力な自己」と直面させようとしても、反発心が強くなってしまうだけで逆効果です。

病院や主治医を転々と変えることも多い

自己愛性人格障害の患者本人は、「治療が進まないのは、主治医のせいだ。もっと腕のいい医師がいるはずだ。」と考え、インターネットなどで調べて別の医師や病院を探すことも少なくありません。

実際に、主治医に秘密にしながら、別の病院を受診して、そこで別の治療を受けるというケースもあります。病院や受診先を転々と変える「ドクターショッピング」をしてしまう自己愛性人格障害の患者さんもいます。

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しかし、主治医を変えても、病院を変えても、自己愛性人格障害の患者本人が抱えている「非力な自己」という現実は何も解消されません。結局、最初の病院に戻ってきて、やっと本腰を入れて治療に取り組むようになる、というケースも少なくありません。

自己愛性人格障害を治すには、コンプレックスを知ることから始まる

自己愛性人格障害を治すためには、患者本人の基本的なコンプレックスを知ることから始まります。自己愛性人格障害の根っこには「恥の感覚」のゆがみがあるといわれています。

自己愛性人格障害の人は、過去に、ばかにされた、否定されてきた体験をもっています。「ダメな人間だ」「価値がない」「無能だ」と非難され、否定的な言葉を言われ続けてきているのです。その反動として、「非力な自己」をかき消すために、尊大な自己イメージをつくりあげてしまうのです。

自己愛性人格障害の人は、ことあるごとに「自分がばかにされている」と感じやすい傾向があります。自己愛性人格障害を治すためには、「どんなコンプレックスがあるのか」ということを知ることが大切です。

自己愛性人格障害の治療には共感が必要

自己愛性人格障害の治療のポイントのひとつに「共感」があります。主治医やカウンセラーなどの治療者が、自己愛性人格障害の患者さんに「共感すること」も治療のひとつです。

かつては、自己愛性人格障害の人は他人を愛することができない、と言われていましたが、共感される体験を通して、人を愛する能力を養うことができるのです。

共感される体験を積み重ねることで、自己愛性人格障害の人は等身大の本当の自分を受け入れることができるようになり、他人を愛する能力を育んでいくことができます。

治療者やまわりの人から共感される体験を通して、自己愛性人格障害の患者本人は、尊大でもなく、非力でもない、あるがままの自分を受け入れることができるようになっていくのです。

自己愛性人格障害の治療期間は長い?

自己愛性人格障害の治療期間は、他のパーソナリティ障害(人格障害)と比較しても長期間になるといわれています。

そういう点では、主治医やカウンセラーなど治療者には、忍耐が必要になるといえます。自己愛性人格障害の治療は難しく、治療効果も少しずつ、ゆっくりとあらわれるものです。

「治療者にも別の治療者のサポートが必要」といわれることもあり、自己愛性人格障害の治療では、治療側の心的負担も大きいといわれています。

◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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