境界性人格障害は治療すれば克服できる?不安や恐怖を軽減することが大切

境界性人格障害は治療すれば克服できる?不安や恐怖を軽減することが大切

最近、境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の患者数が増加しているといわれていますが、病院で治療すれば症状が改善して克服できるのか、という疑問を感じる人も少なくないと思います。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)は、病院で適切な治療を受けることで治る、克服できるものです。境界性人格障害の治療では、心理的な不安や恐怖を解消することが基本となります。

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リストカットやアルコール依存などの衝動行為も

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の特徴のひとつに、リストカットや過量服薬などの自傷行為、過食、大量の飲酒、買い物依存、性的逸脱といった衝動的な行動があります。

こうした衝動的な問題行動の原因には、「相手に見捨てられるかもしれない不安」が心の底にあり、その不安を解消しようとする心の防衛反応と考えられています。

実際にリストカットをした後に安心感や安堵した心理をみせる患者さんも多くいます。見方によっては「心の痛みを身体的な痛みに替える」と言う専門家もいます。

とはいえ、境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の患者さんが、強い自責感情、自己嫌悪の気持ちを感じていることを忘れないようにしましょう。「どうせ死ぬ気はないんだろう」などと周りの人が軽くとらえてしまうと、患者本人を心理的に追い込んでしまうことになりかねません。

心理的背景には不安や恐怖がある

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の主な特徴として次のようなものがあります。

・自傷行為
・過量服薬
・すぐに怒る
・落ち込むやすい
・極端な考え方

こうした問題行動の心理的背景には、不安や恐怖があり、些細な出来事であっても、境界性人格障害の人は激しく動揺してしまうのです。

その不安や恐怖を取り除いていくことが、境界性人格障害の根本的な治療につながります。

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不安を解消することが治療の基本

境界性人格障害の人は、依存している相手から離れ、自立すること自体に不安を感じる傾向がみられます。自立=独り立ちすると、相手から見捨てられてしまうのではないか、と不安感情が湧きあがってしまうのです。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の治療では、このような不安を軽減・解消していくことが基本ベースになります。

些細なことで相手が裏切ったり見捨てることはない、ということを患者本人が理解することが大切になります。そのためには、主治医やカウンセラーだけでなく、家族や友達、職場の上司や同僚などが、境界性人格障害の症状や特徴についてしっかりと理解することが大切です。

当然、患者本人が、不安のもととなっている極端な考え方や思い込みを自覚し、認識できるように心がけていく必要があります。

問題行為を減らす配慮も必要

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の場合、リストカットなど自傷行為、過食、家庭内暴力(DV)、アルコール依存や買い物依存など、様々な衝動的な問題行為がみられることがあります。

治療の第一目標としては、こうした問題行動に走らないことです。問題行動の心理的要因には、不安、恐怖、孤独、無力感などがあります。

家族など周囲の人の対応としては、問題行動を批判するのではなく、境界性人格障害の患者がその行動を通して何かを訴えようとしている心理に配慮することが大切です。「やめなさい」という接し方では、逆に本人を追い込んでしまうことにもなるので注意しましょう。

母子関係に逃げさせないことも大切

また、境界性人格障害の治療では、今起きている問題(職場や友達との人間関係など)とちゃんと向き合うことが大切になります。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の人によくみられる傾向として、家の外での心理的問題であっても「母親の育て方が悪かったから」とすぐに母子関係に逃げようとします。

そして、ささいなことでも母親と言い合ったり、べったりとした母子関係をつくるケースが多くみられます。「ドツボにはまった母子関係」と呼ばれる関係を解消することも、境界性人格障害の治療では重要になります。

◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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