アスペルガーの診断基準は?統合失調症や強迫性障害と似ている?
発達障害のひとつ「アスペルガー症候群」は、場合によっては、統合失調症や強迫性障害の症状と似ているケースもあり、診断の際においてもきちんと区別(鑑別)することが求められます。
そこで今回は、アスペルガー症候群の診断基準と、統合失調症・強迫性障害との共通点と違いについてポイントをまとめてみたいと思います。
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アスペルガーの診断は児童精神科医or小児神経科医で
アスペルガー症候群が疑われる場合、小児神経科か児童精神科を受診するようにしましょう。大人を主に診る精神科医でも問題はありませんが、より豊富な経験がある小児の発達障害の専門医の方が的確かつ正確な診断につながります。
アスペルガー症候群は、高機能自閉症と症状が非常によく似ていて、言葉の遅れがない点に違いがあります。強いこだわり、感覚過敏、コミュニケーション能力が低い、など多くの共通点があり、慎重に鑑別(区別)して診断することが求められます。
アスペルガー症候群の診断方法は、基本的には自閉症とほとんど同じで、子どもの発達歴、家庭、幼稚園、学校での子どもの様子、診察室での振る舞いなど、総合的な情報をもとに診断されます。
アスペルガー症候群の診断基準(ギルバーグ)
①社会性の欠陥/極端な自己中心性(少なくとも2つ)
・友達と相互に関わる能力に欠ける
・友達と相互に関わろうとする意欲に欠ける
・社会的シグナルの理解に欠ける
・社会的、感情的に不適切な行動
②興味/関心の低さ(少なくとも1つ)
・ほかの活動を受け付けない
・固執を繰り返す
・固定的で無目的な傾向
③反復的な決まり(少なくとも1つ)
・自分に対して、生活上で
・他人に対して
④話し言葉と言葉の特質(少なくとも3つ)
・発達の遅れ
・表面的にはよく熟達した言語表現
・形式的で細かいことにこだわる言語表現
・韻律の奇妙さ、独特な声の調子
・表面的、案じていな意味の取り違えなどの理解の悪さ
⑤非言語コミュニケーションの問題(少なくも1つ)
・身振り手振りが少ない
・ボディランゲージのぎこちなさ
・表情が乏しい
・表情が適切ではない
・視線が奇妙、よそよそしい
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⑥運動の不器用さ
・神経発達の検査成績が悪い
統合失調症との共通点と違い
アスペルガー症候群は、自閉症以外にも他の精神疾患と似ている特徴があるため、鑑別が難しく、診断に時間がかかったり、誤診されてしまうケースも少なくありません。
大人のケースでは、統合失調症と診断されていた人が実はアスペルガー症候群だった、というケースもあります。
統合失調症の場合では、妄想や幻覚、幻聴などの症状が特徴的です。一方でアスペルガー症候群の場合、昔の出来事が一瞬のうちに頭の中に蘇ってくることがあり「幻覚を見ているのでは?」と間違われることもあります。
また、統合失調症の中には、表情が乏しく、感情が平板化するタイプがあります。アスペルガー症候群の場合でも、感情表現が苦手で表情が乏しくなる傾向がみられ、統合失調症と非常によく似ている特徴があります。
統合失調症の中には、自発的な行動をせず、人付き合いもせず、引きこもり状態になってしまうケースもあります。アスペルガー症候群の中にも、コミュニケーションがうまくできないため、人付き合いを避けるようになり、引きこもりになってしまう人もいます。
このように、表面的な特徴や症状をみてみると、アスペルガー症候群と統合失調症は共通点が多く、専門家であっても鑑別(区別)が難しいといわれています。
ただし、統合失調症は思春期に発症するケースが多く、幼少期から特徴がみられるアスペルガー症候群とは違いがあります。また、統合失調症は向精神薬で症状が改善しますが、アスペルガー症候群は薬の治療で症状がよくなることはありません。
強迫性障害との共通点と違い
強迫性障害もアスペルガー症候群と似ている精神疾患で、両者の鑑別が難しいといわれています。強迫性障害は、強迫観念におそわれ、一定の行動を繰り返ししてしまう障害です。
例えば、外出したときに家の鍵を閉めたか気になって何度も確認する、といった強迫行為が、自閉症スペクトラムにみられる強いこだわりや反復行動、常同行動と似ているといえます。
ただし、アスペルガー症候群の併存障害として強迫性障害がみられることもあり、子どもの発達過程や支援状況などを考慮した上で、慎重に診断することが求められます。
◆この記事は、教育心理学者、東京学芸大学名誉教授の上野 一彦先生執筆・監修「図解よくわかる大人のアスペルガー(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
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