大人のアスペルガー症候群に多い悩みの具体例

大人のアスペルガー症候群に多い悩みの具体例

発達障害のひとつである「アスペルガー症候群」は、子どもだけでなく、最近では「大人のアスペルガー症候群」についての関心も高くなってきています。

子どもの頃には「アスペルガー症候群」と気づかず、大人になって会社で働くようになってから、職場での人間関係などで問題やトラブルが多くなり、はじめて自分がアスペルガー症候群と気づいた、というケースも少なくないようです。

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そこで今回は、大人のアスペルガー症候群に多い悩みの具体例についてまとめてみたいと思います。

大人のアスペルガー症候群に多い悩みの具体例

大人のアスペルガー症候群(アスペルガー障害)の場合、その特性のため、周囲の人から理解されにくく、孤立感や無力感、被害者意識などに悩み苦しんでいる人も少なくありません。

日本では、発達障害やアスペルガー症候群の概念が一般的に広がるようになったのは、まだまだここ10数年ということもあり、成人して社会人になっている人の中にも、子どもの頃には障害に気づかず、社会に出てから不適応状態になり、大人になってから初めてアスペルガー症候群と診断されるケースもあります。

大人のアスペルガー症候群の人の悩みの具体例としては、次のようなものが多い傾向があります。

【大人のアスペルガー症候群に多い悩みの具体例】
・雑談が苦手
・人と打ち解けられない
・「いじわる」と思われてしまう
・異性との接し方が分からない
・同じミスを繰り返してしまう
・指示待ち人間と言われる
・朝起きるのがつらい
・会社の上司になじめない
・家族に理解してもらえない
・診断名をカミングアウトするか悩む

①雑談が苦手【大人のアスペルガー】

大人のアスペルガー症候群の人の中には「雑談が苦手」と悩む人が多いようです。

例えば、大学生で授業の空き時間に、アルバイト先での休憩時間に、職場でのランチタイムや休憩時間など、他人と何を話せばいいのかわからず、人間関係がギクシャクしてしまったりすることもあります。

しかし、「雑談が苦手」というのはアスペルガー症候群の特性のひとつともいえます。無理に話そうとしても会話がかみ合わず、本人がつらくなってしまうこともあります。

アスペルガー症候群の弱点を克服しようとするよりも、うまく付き合っていく方法を考える方がよいでしょう。話の聞き役になったり、ひとりでいる方が楽なときは読書をするなど、静かに時間を過ごすこともひとつの方法です。

②人と打ち解けられない【大人のアスペルガー】

アスペルガー症候群の人は、まわりの雰囲気やその場の空気を読むのが下手なことが多く、また「こだわりが強い」という特性もあります。

そのため、周囲の人たちからは「変わっている」「自分勝手」と思われてしまうことも少なくありません。うまく人と打ち解けることができず、周りの人から避けられたり、距離をおかれてしまうこともあります。

アスペルガー症候群の本人に悪気があるわけではないのですが、周囲の人に理解してもらうことが難しいのです。

アスペルガー症候群について理解してくれる人に間に入ってもらい、障害について説明してもらったり、直接「何か気にさわることがあれば指摘してほしい」と率直に頼むのも一つの方法です。

③いじわると思われてしまう【大人のアスペルガー】

アスペルガー症候群の人は、相手がどう思うかを想像するのが苦手なため、自分が思ったことをそのまま口にしてしまう、という特性があります。

そのため、本人はいじわるとするつもりはなくても、相手を傷つけるような言葉を言ってしまったり、トラブルの元となりやすく、周囲の人からは「口が悪い」「いじわる」と思われてしまうことも少なくありません。

素直で正直、ということ自体はいいのですが、乱暴な言葉づかいには注意して、話し方のマナーを身につけるようにするとよいでしょう。

④異性との接し方がわからない【大人のアスペルガー】

アスペルガー症候群の人は、相手の気持ちを想像することができず、自分の気持ちだけ考えて行動してしまうところがあります。

そのため、気になる異性がいると、じっと見つめたり、相手の後を追いかけたりする行動をしてしまうこともあります。

しかし、それでは異性からは「気持ち悪い」「気味が悪い」と困惑させたり、恐怖感を抱かせてしまうだけです。

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異性とうまくつきあうためには、自分の気持ちを押し付けるだけでは失敗してしまいます。どうすればいいのか、信頼できる友達に相談してみましょう。

⑤同じミスを繰り返してしまう【大人のアスペルガー】

アルバイトや仕事で同じミスや失敗を何度も繰り返してしまう、というアスペルガー症候群の人もいます。

これもアスペルガー特有の特性の影響で、手順を完全に理解できなかったり、間違えて覚えてしまうことなどが原因といえます。

また、アスペルガー症候群の人はひとつの物事に集中しやすい傾向があり、レジを打ちながらお弁当を温める、といったコンビニの仕事など、同時に複数の作業をする仕事に対して苦手意識を持つ人も少なくありません。

そのため、アスペルガー症候群の人には、何かひとつのことに集中して取り組める仕事の方が向いているといえます。

⑥指示待ち人間と言われる【大人のアスペルガー】

アスペルガー症候群は知的障害がなく、中には知能が高く学校の成績が優秀だったという人もいます。勉強はできたので国立大学を卒業し、会社に就職して仕事をしている人もいるのです。

しかし、仕事での指示があいまいだったり、一度に多くの指示を出されたりすると、頭が混乱してしまい、仕事に取り組めなくなってしまうことがあります。また、周囲の音がうるさい、まわりで人が動き回っていて落ち着かない環境でも同じことがいえます。

そのため、職場の上司や同僚から「頭はいいけど使えない」「自分から動かない指示待ち人間」などと思われてしまうことも少なくありません。

⑦朝起きるのがつらい【大人のアスペルガー】

大人のアスペルガー症候群では、職場の人間関係で無理をすると不適応を起こしてしまう傾向があります。

ストレス状態が続くと、抑うつ状態になってしまい、うつ病を発症してしまうこともあるので注意が必要です。

「朝起きるのがつらい」と感じるのであれば、その原因がどこにあるのか、原因を取り除くことができるのか、職場の上司やカウンセラーなどに早めに相談するようにしましょう。

⑧会社の上司となじめない【大人のアスペルガー】

アスペルガー症候群の人は、「何も言わず俺についてこい」というような上司や、自分のやり方で仕事を進めないと納得しない上司、大声を出しやすい上司の下では、うまく働けない傾向があります。

「前の上司はよかったけど、新しい上司になじめない」と悩むこともあり、いつ怒られるか緊張して仕事での失敗やミスが多くなってしまうこともあります。

今の上司にアスペルガー症候群について理解をしてもらうことが理想ですが、それが難しい状況であれば、以前の上司に相談してアドバイスをもらうなどの方法も考えてみると良いでしょう。

⑨家族に理解してもらえない【大人のアスペルガー】

大人になってから「アスペルガー症候群」と診断されたことを親に伝えても、「そんなことはない」と家族に理解してもらえない、というケースもあります。

「甘えている」「仕事が続かないのは努力が足りない」など、親から責められてしまう、ということも少なくないようです。

親や家族にアスペルガー症候群について理解してもらえない場合には、医師のところへ家族をつれていき、医師から説明してもらるとよいでしょう。

親や家族には「アスペルガー症候群」について正しく理解してもらいたいものですが、どうしても理解が得られない場合には、家族と距離を置いて生活する方が本人の精神的な安定のためになることもあります。

また、家族以外の人でも、ひとりでもアスペルガー症候群についての理解者がいれば、本人の気持ちは楽になるものです。

⑩診断名をカミングアウトするか悩む【大人のアスペルガー】

友達や会社の人に「自分はアスペルガー症候群だ」と告知するかどうか、カミングアウトすべきかどうか悩むケースも少なくありません。

カミングアウトした方が楽になる気はするが、それで友達が離れてしまわないか、仕事を辞めさせられないか、と思い、なかなか話す勇気が出ない、と思う人もいます。

この場合、友達や会社の人が本人の人間性について理解しているのであれば、診断名を伝える必要はないといえます。

大切なのは診断名ではなく、どんな対応や接し方をしてくれるか、です。

障害についてもっと深く理解してもらいたい、ということであれば、信頼できる相手だけに診断名を告知して、より理解してもらうという方法もあるでしょう。

◆この記事は、教育心理学者、東京学芸大学名誉教授の上野 一彦先生執筆・監修「図解よくわかる大人のアスペルガー(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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