パーソナリティ障害の治療法の種類は?入院が必要なケースも?
パーソナリティ障害(人格障害)の治療において、「確実に治すことができる決定的な治療法はない」というのが現状です。患者さんの症状や状態に合わせて複数の治療法を組み合わせておこなわれるの一般的です。
そこで今回は、パーソナリティ障害(人格障害)の治療法の種類とそれぞれのポイントについてまとめてみたいと思います。
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パーソナリティ障害(人格障害)の治療法の種類
パーソナリティ障害(人格障害)の治療法は複数の種類があり、代表的な治療法には次のような方法があります。
・個人精神療法(カウンセリング)
・集団精神療法(グループカウンセリング)
・家族療法
・薬物療法
・認知行動療法
それぞれの治療法についてもう少し詳しくみてみましょう。
個人精神療法(カウンセリング)
個人精神療法とは、医師や臨床心理士などによる「心理カウンセリング」のことです。主治医や心理技術者との対話によって、患者さんの心理面に働きかけていく治療法です。
カウンセリングは基本的には1対1の会話(対話)形式で行われ、患者さんの認知、思考、考え方、価値観、行動パターンなど、様々な面での偏りを改善していく根本的な心理治療方法です。
カウンセリング(個人精神療法)の治療効果があらわれるには、比較的長い年月を要することが通常です。また、治療者(医師やカウンセラー)と患者(クライアント)との間に信頼関係が築かれていることが前提となります。
集団精神療法(グループカウンセリング)
集団精神療法は「グループカウンセリング」も、個人精神療法と同じように、患者さんの心理面に働きかける治療方法で、集団(複数人のグループ)で行うのが特徴的です。
治療者(医師・臨床心理士など)、患者本人、他の患者、の複数人のグループで対話を行い、患者さん同士の相互作用や、治療者と他の患者さんとのやりとりなどを通して治療に生かしていきます。
自分の疾患(障害・病気)を客観的に理解したり、物事を俯瞰的にとらえる力を養ったり、他者との関係性を学ぶ上で有効な方法です。
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家族療法
家族療法は、患者さんとその家族との人間関係にフォーカスし、家族関係での問題を解決していく治療アプローチです。家族のそれぞれの役割やポジション、関係性などを改善し、正常化していくことで、患者さんが抱えている心理的問題の改善、精神の安定を目指していきます。
薬物療法
薬物療法では、治療薬を使い、患者さんが苦しんでいる症状を一時的に改善する目的で行われます。例えば、不安、緊張、興奮、うつ症状などの精神症状を、薬の効果によって軽減させます。薬物療法は、根本的な治療法ではなく、対症療法となります。
認知行動療法
認知行動療法は、患者さんの認知の歪みを修正する治療法です。認知行動療法では、患者本人に、自分を客観的に観察してもらい、認知のゆがみ、思考や考え方、物事の捉え方のかたよりが、いつ、どのようにして生じるのかを記録し、自覚してもらいます。
その上で、かたよった認知を改善、修正するための方法や、行動を変えるために、ロールプレイングなどを行い、実践的に身体に覚えさせていきます。
確実な治療法は存在しない
パーソナリティ障害(人格障害)の治療において、確実な治療法はありません。人によってパーソナリティは違うため、ある人にあった治療法が違う人にも同じ効果があるとは限らないのです。
また、パーソナリティ障害(人格障害)の治療は、身体的な病気の治療のように、治療効果が目に見えて実感できる、というものではありません。治療中に患者さんのおかれている状況が代わり、心理状態にも影響することがあり、一時的に症状が悪化してしまったのではないか、と感じることも少なくありません。
場合によっては、パーソナリティ障害(人格障害)の治療期間が数年にわたることも少なくなく、患者本人も家族も、気長に治療を続けていく姿勢が大切になります。
入院治療が必要な場合もある
パーソナリティ障害(人格障害)の治療は、基本的には定期的に病院を受診する「通院治療」です。ただし、場合によっては入院治療を医師からすすめられるケースもあります。
入院治療をすすめられるケースの例として、患者本人の心身の疲労が激しく休養が必要な場合や、自殺未遂や自傷行為(リストカットなど)、家庭内暴力が目立つ場合などがあります。
とはいえ、あくまでもパーソナリティ障害(人格障害)の治療の基本は通院治療です。入院したとしても短期間の入院になると考えておいたほうがよいでしょう。
◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
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