【パーソナリティ障害の治療】性格や人格を変えることではない

【パーソナリティ障害の治療】性格や人格を変えることではない

パーソナリティ障害(人格障害)の治療は、患者本人の人格や性格を変えることではありません。その人の基盤となっているパーソナリティを変えようとすることは、その人の本質を否定することになってしまいます。

パーソナリティ障害(人格障害)の治療は、パーソナリティを変えようとすることではなく、社会不適応を起こしている部分を改善していくことです。

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性格や人格を変えることが治療ではない

パーソナリティ障害(人格障害)を克服する・治す、と聞くと、その人の性格や人格を変えなければいけない、と考えてしまう人も少なくないようですが、それは大きな勘違いです。

パーソナリティ障害(人格障害)に治療は、患者本人がもともと持っているパーソナリティ(性格・人格など)を別のものに変えてしまうことではありません。

例えば、ひとりでいることが好きな人に友達をたくさんつくるように強要したり、依存性の強い人に無理やり自立させようとすることは、患者本人の全人格を否定するようなものです。

そのような関わり方や対応では、本人が大きなストレスがかかってしまい、激しい反発や治療放棄につながる可能性もでてきます。

問題を解決し、社会に適応していくこと

パーソナリティ障害(人格障害)の治療の目標は、患者本人が本来持っているパーソナリティを尊重しながら、「障害」となっている部分を改善することです。

「障害」となっている部分とは、社会不適応となっている部分のことで、例えば、学校や職場、家庭などでの人間関係でのトラブルや、就職や仕事の悩みなどのことです。

パーソナリティ障害(人格障害)の人が直面している問題が解決できれば、本人はスムーズな社会生活を過ごすことができるようになり、それはもはや「障害」ではなくなるのです。

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ソーシャルスキルを身につけること

パーソナリティ障害(人格障害)の人の多くは、コミュニケーションスキルなどのソーシャルスキル(社会生活を送る上での必要な技能)が低いことが多く、そのことが問題やトラブルの原因になっています。

例えば、自分の気持ちの伝え方、相手の話の聞き方、意見が違うときの折り合いのつけ方、断り方、ストレス発散方法など、社会生活を送る上での様々な対処方法がソーシャルスキルになります。

対人コミュニケーションスキルを含め、ソーシャルスキルは子どもの頃からの成長プロセスの中で、様々な経験を通して少しずつ身につけていくものです。

ですが、最近では、大人になっても適切な対応方法や対処法がわからず、右往左往して困っている人が多くなっているようです。その結果、精神的ストレスがたまりやすく、ひきこもりやうつ病の増加につながっていると考えられます。

パーソナリティ障害(人格障害)の治療では、患者本人の心身の疲労やストレスを軽減させることと併せて、ソーシャルスキルの習得を目指し、社会に適応できるようになることがポイントになります。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、社会生活を送る上で必要となる技能のことで、社会的技能などと呼ばれることもあります。

イメージとしては、「コミュニケーションスキル」と似たようなものと捉えておくと、大きくズレることはないと思います。加えて、ストレス発散の方法なども含まれます。

ソーシャルスキルトレーニングを受けることができる場所は、病院(精神科デイケアなど)、精神保健福祉センター、保健センター、地域活動支援センターなどがあります。

主な内容は、対人コミュニケーション(話の聞き方、反応の仕方、気持ちの伝え方、断り方など)のトレーニングと、問題解決トレーニング(ストレス発散方法や物の見方の広げ方など)です。

◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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