【ADHDと神経伝達物質】ドーパミンの働きの低下が原因か?

【ADHDと神経伝達物質】ドーパミンの働きの低下が原因か?

ADHDの行動特性には、脳内の神経伝達物質も関連しているのではないか、と考えられています。

脳内の神経伝達物質には様々な種類がありますが、ADHDに関係しているといわれているのは、ドーパミンとノルアドレナリンです。

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ADHDと神経伝達物質ドーパミン

神経伝達物質とは、神経活動を起こすときに、脳内の神経細胞間で送られる電気信号を伝える役割を担っている物質のことです。

数多くある脳内の神経伝達物質の中でもドーパミンはADHDと関わりが深いといわれています。

ドーパミンは、学習や目的がある行動を行ったり、ワーキングメモリーを働かせたりする神経活動において重要な役割を担っているといわれています。

そうした神経伝達物質が必要なときに活発に神経伝達を行うことができないと、学習や作業がはかどらなかったり、ワーキングメモリーが十分に機能せず、注意力が低下する原因になります。

ADHDの原因はドーパミン不足なの?

ADHDとドーパミンの関係について、ある研究報告では、ADHDの30%以上の割合で「ドーパミントランスポーター」が過剰に働きすぎてしまい、ドーパミン不足に陥ってしまう、といわれています。

「ドーパミントランスポーター」とは、一度放出したドーパミンを神経細胞に再吸収するときに使われる「再取り込み口」のことです。

神経細胞がドーパミンを送るとき、ドーパミンを放出し、そのうちの一部が隣接するドーパミンレセプターで受け取られ、神経伝達に使われます。しかし、放出したドーパミン全部がレセプターに届くわけではなく、残りのドーパミンは無駄に放出されたことになります。

そこで、一度放出したドーパミンを再利用できるように、神経細胞内に再取り込みする機能があり、その取り込み口がドーパミントランスポーターと呼ばれます。

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ADHDでは、ドーパミントランスポーターが過剰に機能してしまい、放出したドーパミンを大量に再吸収してしまいます。その結果、ドーパミンがドーパミンレセプターと結びつきにくくなり、ドーパミンによる神経伝達が滞ってしまいます。

ADHDの治療薬「コンサータ」とドーパミン

ADHDの代表的な治療薬として「コンサータ」が用いられます。コンサータには、ドーパミントランスポーターの活動亢進を抑える効果があります。

コンサータというADHDの治療薬は、ドーパミンそのものの量を増やす効果があるのではなく、ドーパミントランスポーターの働きを抑制し、ドーパミンレセプターが受け取るドーパミンの数を増やし、神経伝達を活発化させる作用があるのです。

また、ノルアドレナリントランスポーターの働きを抑制する治療薬「ストラテラ」にも、ADHDの症状を軽減する効果があることが知られています。

その仕組みについては、まだはっきりと解明されていませんが、複数の実行機能の中枢がある前頭葉では、ノルアドレナリントランスポーターがドーパミンの再取り込みに関係していることがわかっています。

ADHDとドーパミンの働き|まとめ

ドーパミンとは、脳内において神経細胞間で情報を伝達する役割を担っている神経伝達物質のひとつで、運動調節、認知、感情、意欲、学習などに関係して、ワーキングメモリーとの関連も深いといわれています。

ADHDでは、ドーパミンの働きが低下した状態になり、ADHDの特有の不注意や多動などの特徴的な症状があらわれる、と考えられています。

そこで、ドーパミントランスポーターの活動を制御する治療薬コンサータを用いて、ドーパミンが再吸収されなくなり、ドーパミンによる神経伝達が活発になり、不注意や多動などの症状がおさまるのです。

◆この記事は、元東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修「図解よくわかるADHD(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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