親子関係は問題ではない?【パーソナリティ障害(人格障害)の治療】

親子関係は問題ではない?【パーソナリティ障害(人格障害)の治療】

パーソナリティ障害(人格障害)の患者さんに多い傾向として「現在の問題を、親子関係の問題にすり替える」というケースが多くみられます。

自分の親に対して「育て方が悪かったのが原因」「私が悩んでいるのは親のせい」などと、親(特に母親)に責任を押し付けようとする言動が目立ちます。

スポンサーリンク

パーソナリティ障害の原因は親子関係なの?

パーソナリティ障害(人格障害)の発症原因は親子関係にある、と言われることもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

現在の研究段階において、パーソナリティ障害(人格障害)の発症原因は、まだハッキリと解明されておらず、「これ」といった原因が分かっていない、というのが現状です。

今もなお、パーソナリティ障害(人格障害)の原因については様々な研究が行われていて、パーソナリティ障害(人格障害)の発症には様々な要因が関係しているのではないか、と考えられています。

以前は、幼少期の親子関係の問題、中でも母親との関係が注目され、育て方やしつけ、愛情不足などがパーソナリティ障害(人格障害)の発症に深く関係していると考えられていました。

また、親子関係だけでなく、生物学的な特性、脳機能、脳内伝達物質の異常なども関連しているという研究報告もあります。最近では、子どもの発達段階、中学生や高校生の思春期の友人関係に注目する専門家も増えてきています。

「親のせい」にしがちなパーソナリティ障害の患者

パーソナリティ障害(人格障害)の患者本人は「親の育て方が悪かった」「愛情不足が原因だ」「親のせい」「親が悪い」と、家庭の外で起きている問題を、親子関係の問題にすり替え、親の責任にしようとする傾向が多くみられます。

「親の育て方が悪かった」と親に責任をなすりつけたところで、現在の社会生活における問題の解決にはつながりません。

スポンサーリンク

親子関係や友達との人間関係と、パーソナリティ障害(人格障害)の発症はまったく無関係とは言えませんが、パーソナリティ障害(人格障害)の治療において大切なのは、親子関係の問題を改善することではなく、現在、患者さんが直面している問題に対して、どのように考え、どう行動していくか、問題解決の方法を探していくことが大切なのです。

パーソナリティ障害(人格障害)を克服していくためには、「親が悪い、責任をとってもらう」という考え方を捨て、ひとりの大人・社会人として、自分の力で目の前の問題を解決しようとする気持ちを持つことが大切です。

目の前の問題と向き合うこと

パーソナリティ障害(人格障害)を改善し、治そうとするためには、「今、目の前の問題とちゃんと向き合うこと」が重要です。

例えば、学校や職場などで人間関係がうまくいかないとき、患者本人は「親子関係に問題があって、職場での人間関係にも関連している」「親子関係を改善すれば、職場の人間関係もうまくいく」と考えがちですが、職場の問題と家庭の問題は別のことであって、切り離して考えるべきです。

今、目の前の問題において、どんなトラブルが起きているのか、どんなときに起こりやすいか、自分の考え・相手の考えはどうか、など、当事者同士の問題として捉えるようにしましょう。

そして、相手に自分の気持ちをうまく伝えることができているのか、相手の気持ちをちゃんと理解しているか、という観点で出来事を再考察していきます。

誤解が生じやすいのであれば、コミュニケーション方法に問題があったり、相手からの言葉の受け取り方がズレているのかもしれない、といった問題を突き詰め、患者本人が改善していく部分を見つけていきます。

親はどう考えた方がいい?

パーソナリティ障害(人格障害)の子供を持つ親は、どのように捉えていけばよいのでしょうか。

親も同じように、「職場や学校の問題」と「親子関係の問題」を関連付けず、別のものとしてとらえるようにしましょう。患者本人から「親が悪い」と親を責める言動が出てくるでしょうが、それに同調しない対応が大切です。

子供が社会に出て直面する壁は、子ども自身の力で乗り越えていかなくてはいけません。親が代わりに問題を引き受けていては、いつまでたっても子どもは未熟なままです。

◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

スポンサーリンク