パーソナリティ障害(人格障害)の10タイプと3つのグループ分類
現在、日本の精神医療現場で広く用いられている診断基準「 DSM-Ⅳ-TR」では、パーソナリティ障害(人格障害)は10タイプに分類されています。
また、10種類のタイプは、その特徴や症状からA群、B群、C群3つのグループに分けられています。
パーソナリティ障害のタイプ分類
パーソナリティ障害(人格障害)は、それぞれの症状や特徴から、次の10種類のタイプ分けと、3つのグループに分類されています。
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【A群】
妄想性パーソナリティ障害
スキゾイド・パーソナリティ障害(統合失調質パーソナリティ障害)
スキゾタイパル・パーソナリティ障害(統合失調型パーソナリティ障害)
【B群】
反社会性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害
【C群】
回避性パーソナリティ障害
依存性パーソナリティ障害
強迫性パーソナリティ障害
妄想性人格障害の特徴
妄想性人格障害(妄想性パーソナリティ障害)の人にみられる特徴は、他人への不信感や猜疑心が強い、自分を騙そうとしていると思い込む、危害を加えようとしていると考えがち、などの特徴がみられます。
そのため、妄想性人格障害の人は、自分の友人や同僚が親切に接してくれていても「悪意がある」と思い込み、周囲の人間関係でのトラブルを起こしがちです。
その結果、相手にだまされた、攻撃された、と思い込み、過剰に攻撃的になったり、裁判を起こすケースもあり、自分の成長を強く主張する傾向がみられます。
スキゾイド・パーソナリティ障害の特徴
スキゾイド・パーソナリティ障害は、日本語では「統合失調質パーソナリティ障害」という意味に訳されています。クレッチマーが「細長型」と呼んだパーソナリティと共通しています。
スキゾイド・パーソナリティ障害にみられる特徴は、他人への関心がない、自分の世界にこもりがち、孤立しやすい、感情を出さない、鈍感、冷淡といった印象をまわりに与える、などの特徴がみられます。
また、スキゾイド・パーソナリティ障害の患者さんの中には、手先が器用で絵画や手芸を好む傾向が多く、感性が繊細な人も多く、文学や芸術の分野で才能を発揮するケースもあります。
スキゾタイパル・パーソナリティ障害の特徴
スキゾタイパル・パーソナリティ障害は、スキゾイド・パーソナリティ障害と同じ気質があり、非社交的で現実離れした感覚をもったり、奇妙な考えに浸り、変わった行動や、会話がかみ合いににくい、という特徴がみられます。
スキゾタイパル・パーソナリティ障害と統合失調症は、似ている症状がみられるため、統合失調型との鑑別も問題になりやすいのが現状です。
反社会性パーソナリティ障害の特徴
反社会性パーソナリティ障害とは、その名の通り、犯罪や詐欺、暴力などの反社会的な行動がみられ、それらの行動に対して罪悪感を感じていないことが大きな特徴です。
また、道徳観や倫理観にかけ、不正直、責任感がない、共感や同情をしない傾向がみられます。アルコール依存症や薬物乱用になりやすい傾向もあります。
境界性人格障害の特徴
境界性パーソナリティ障害は「ボーダーライン人格障害」などと呼ばれることもあり、不安定な対人関係が大きな特徴です。
信頼できる相手にであると依存的になったり、逆に些細な誤解や勘違いをきっかけに「見捨てられ不安」を抱き、リストカットやDV(家庭内暴力)などの衝動的行動に走ってしまうことも少なくありません。
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演技性パーソナリティ障害の特徴
演技性パーソナリティ障害の人は、異性の注目を浴びたいという心理欲求が強く、派手な服装やメイク、誘惑的な仕草や挑発的な言動が特徴的です。異性関係で三角関係に陥ってしまいやすい傾向もあります。
また近年では、嘘をつく、人をだます、といったタイプの人も増加傾向にあり、嘘を自覚せずに本当のことを信じ込んでしまう「空想性虚言」のケースもあります。
自己愛性人格障害の特徴
自己愛性パーソナリティ障害の人に見られる特徴として、自分のことを優秀で特別な存在と考える、周囲の人からの賞賛を当たり前のことと思う、他人は自分に従う、という態度が特徴的です。
その心理的背景には、自分を無力だと感じる強い劣等感があり、プライドが砕かれるような状況になると、落ち込み、引きこもってしまったり、薬物依存などの反社会的行動をおこしてしまうこともあります。
自己愛性人格障害には、誇大的な自己を押し出すタイプと、表面的には控えめで自己主張をせず、傷つきやすいタイプがあります。
回避性パーソナリティ障害の特徴
回避性パーソナリティ障害では、失敗したり、拒絶や批判されることに対して極端に不安や恐怖を感じ、そうした状況にならないように社会との関わりを避けようとする傾向がみられるのが特徴的です。また、性格は神経質で、自信がない、傷つきやすい傾向がみられます。
回避性パーソナリティ障害の人は、親の期待に応えようと努力してきたが報われず、自分には価値がない、ダメ人間だ、と思っていることが多いようです。
他人との関わりを極端に避けるため、不登校や引きこもりになってしまうこともあります。ですが、心理的には他人への関心がないわけではなく、逆に人とのふれあいを強く欲しているといえます。本当は親しい人間関係を築きたいと願っているが、傷つくのが怖くてうまく人間関係を築けない状態なのです。
依存性パーソナリティ障害の特徴
依存性パーソナリティ障害の場合、自分ひとりで決断したり、判断することができないのが特徴的です。いつも他人の助言や指示を求め、自分を導いてくれる人に対して依存し、また行動や決断の結果に対する責任も相手におわせようとします。
依存性パーソナリティ障害の依存対象となりやすい人は、親、家族、恋人、配偶者、親友などです。
依存性パーソナリティ障害には、「幼児型」と「服従型」の2つのタイプがあり、「幼児型」では相手に盲目的かつ楽観的に依存し、「服従型」では悪い人に利用されているとわかっていながらも抵抗できないでいます。
「幼児型」の依存性パーソナリティ障害の場合、相手が悪意を持っていてもそれに気づかず、表面的な良い面だけを見て依存してしまいます。
「服従型」では、家庭内暴力(DV)やアルコール依存、自己愛性人格障害や反社会性人格障害のパートナーに利用され、犯罪行為に走ってしまうケースもあります。
強迫性パーソナリティ障害の特徴
強迫性パーソナリティ障害は、几帳面でルールや秩序にこだわり、感情表現が乏しいのが特徴です。細かいことにこだわりすぎて、全体を俯瞰して捉えることが苦手です。
親に「あれをするな、これをするな」と厳しく制約されて育てられた結果、罪悪感を心の底に抱えていて、自分の行動や態度を規制してしまう傾向があります。
◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
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