パーソナリティ障害(人格障害)は昔からあった?歴史的背景について
最近になって、「パーソナリティ障害(人格障害)」についての認知度の高くなってきていますが、そもそもパーソナリティ障害は昔からあったのでしょうか。
そこで今回は、パーソナリティ障害(人格障害)の歴史的背景について書いてみたいと思います。
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境界性人格障害の概念が生まれたのはいつ頃?
人格障害(パーソナリティ障害)についての研究は昔かrあありましたが、「障害」として認められるようになったのは、まだ最近のことです。
ボーダーライン(境界例)とよばれる境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)という概念が誕生したのは1950年代になってからです。
「境界性人格障害」の人たちは、不安などの精神症状と、自律神経失調症のような身体症状がみられりう「神経症(ノイローゼ)」と、「精神病(統合失調症)」の中間、ちょうど境界線上のような症状がみられることから、「境界例=ボーダーライン」と呼ばれるようになりました。
ボーダーライン人格障害の患者さんたちは、精神科での治療中にでも、激しい感情や衝動的行動を起こし、治療関係者を混乱させたり、周囲の人を巻きこんでしまうことも少なくありませんでした。
こうした人たちの精神構造について、アメリカの精神分析家であるカーンバーグは「境界性パーソナリティ構造」と呼び、カーンバーグの構造論は現在の診断基準であるDSM-Ⅳ-TRのベースとなっています。
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自己愛性人格障害の概念の誕生について
激しい感情や行動が特徴的な境界性人格障害(ボーダーライン)に対して、控えめな人でも心の中に誇大的な自己を持っていることを、アメリカの精神分析家コフートが発見し、「自己愛性パーソナリティ障害」と呼ぶようになりました。
これらのパーソナリティ障害(人格障害)は、神経症の基盤となっていたヒステリー性格や強迫性性格などの「神経症水準のパーソナリティ」と、循環病質や失調病質などの「精神病水準のパーソナリティ」の中間になることから、「境界水準のパーソナリティ」と呼ばれています。
治療対象になったのは1980年頃から
このように「パーソナリティ障害(人格障害)」の概念や考え方は昔から存在していましたが、診断名として定着し、治療対象になったのは1980年頃からで、まだごく最近の話です。
アメリカ精神医学会の診断基準である「DSM(精神膝疾患の診断・統計マニュアル)」の第三版になる「DSM-Ⅲ」が1980年に作成され、初めて「パーソナリティ障害(人格障害)」という診断名が登場しました。
DSM-Ⅲでは、パーソナリティ障害の診断基準と、それぞれの症状別に10パターンに分類しています。その後、2000年にDSM-Ⅳ-TRが作成され、現在の医療現場において広く用いられています。(最新版はDSM-5)
◆この記事は、精神科医、精神分析家、元福岡大学医学部教授である牛島定信先生執筆・監修「図解やさしくわかるパーソナリティ障害正しい理解と付き合い方 (ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
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