ADHDの診断には時間がかかるケースも?診断基準DSM-5

ADHDの診断には時間がかかるケースも?診断基準DSM-5

ADHDの疑いがあると医師が判断した場合、診察や検査を行った上で、ADHDの診断基準に照らして最終的に診断がされます。

日本で最もよく用いられている診断基準は、アメリカ精神医学界による「DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)」です。(※DSM-5のADHDの診断基準については、記事に一番最後に載せてます)

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ADHDの診断基準の特徴について

ADHDの診断基準であるDSM-5では、「不注意」の症状項目のうち6つ以上、「多動性・衝動性」の症状項目のうち6つ以上が当てはまることが要件になっています。

また、そうした行動特性が2カ所以上の生活場面(家庭と学校など)で生じていること、6ヶ月以上持続していることも付帯要件としてあげられています。

ですので、ADHDの行動特性が学校だけでみられる場合や、クラス替えをした後に急に症状があらわれるようになった場合などは、ADHDとは診断されないことになります。子どもによっては、環境の変化やその時々の心理状態によって、ADHDに似ている行動特性があらわれることがあるからです。

病院の診察時では、家庭だけでなく、幼稚園や学校などでの子どもの様子や振る舞いについて医師が知る必要があり、子どもが幼い頃から今までの発達過程における行動の特徴や生活態度なども、ADHDの診断には必要になります。

ADHDの診断には時間がかかるケースも

ADHDの診断において、医師による問診、視診、心理検査などを実施した上で、DSM-5の診断基準に照らしても、すぐに診断できずに時間がかかるケースもあります。

家庭と学校で子どもの行動特性のあらわれかたに違いがあったり、他の発達障害(LD学習障害やアスペルガーなど)を合併している可能性がある場合、症状が似ている別の障害である可能性など、正確な診断をするために時間を要することがあります。

こうしたケースの場合では、何回か診察を行って経過観察をした上で、子どもの本質を見極めていくことが求められます。

診断することが目的ではない

ADHDかどうかを診断することが最終目的ではない、ということを忘れないようにしましょう。診断は最終目標ではなく、むしろスタートラインに立つことと考えることができます。

たとえ「診断基準を満たさないからADHDではない」とう診断になったとしても、子ども本人が日常生活において不都合や困難を抱えているのであれば、適切な支援が必要になります。

ADHDでなければ別の原因が考えられることもありますし、ADHDかどうかの境界線上にいるということであれば、ADHDに準じたサポートが必要です。

ADHDかどうかの診断は、学校生活や家庭の日常生活で困難を抱えている子どものために、必要で適切な支援を行い、生活しやすくなるようにするためのきっかけのひとつです。診断はゴールではなく、その際にある「支援」に意識を向けることが大切なのです。

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ADHDの診断基準(DSM-5)

DSM-5でのADHDの診断基準は以下のようになっています。DSM-Ⅳ-TRからDSM-5においては、ADHDの診断基準では大きな変化はありませんが、「子ども特有のもの」という位置付けから、「成人した大人もも含む」という点が強調されるようになっています。

A.次の(1)か(2)のいずれかが当てはまる。

(1)不注意
次の注意欠陥(不注意)症状のうち、6つ以上の項目が少なくとも6ヶ月以上続いており(17歳以上では5つ以上)、そのために生活への適応に障害をきたしている。また、こうした症状は発達段階とは関連性がない。

a.細かいことに注意がいかない。あるいは学校での学習や仕事、その他の活動において不注意なミスをする。

b.様々な課題や遊びにおいて、注意力を地蔵することが困難。

c.直接話しかけられても聞いているように見えない。

d.指示を最後までやりとげない。また、学校の宿題や家事、職場での仕事を終わらせられない(指示が理解できない、指示に反抗したわけではない)

e.課題や活動を筋道を立てて行うことが困難。

f.持続的な精神的努力を要する課題を避けたり、嫌がる。または嫌々する。(学校での宿題や学習など)

g.課題や活動に必要なものをすぐなくす。(宿題、本、鉛筆、道具など)

h.外からの刺激で気が散りやすい。

i.日常活動の中で忘れっぽい。

(2)多動性と衝動性
以下の多様性、衝動性のうち、6つ以上の項目が少なくとも6ヶ月以上続いていて(17歳以上では5つ以上)、そのために生活への適応に障害をきたしている。またこうした症状は発達段階とは関連性がない。

a.そわそわして手足を動かしたり、椅子の上でもじもじする

b.教室など席に座っていることが求められる状況で、席を離れる。

c.走り回ったり、よじ登ったりすることが不適切な場面で、そういった行為をする。

d.落ち着いた状態で遊んだり、活動することが困難。

e.じっとしていない、または、せかされているかのように動き回る。

f.しゃべりすぎる。

g.質問が終わる前に答えてしまう。

h.順番を待つことが困難。

i.他人をさえぎったり、割り込んだりする。

B. 不注意、多動性/衝動性の症状のうちいくつかは12歳までに存在していた。

C. 不注意、多動性/衝動性の症状のうちいくつかは2つ以上の環境において存在する。(家庭、学校、職場など)

D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明らかな証拠がある。

E. その症状は、統合失調症や他の精神障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患では説明されない。
(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害など)

◆この記事は、元東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修「図解よくわかるADHD(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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