[カウンセリング]クライエントの感情転移とは?陽性転移と陰性転移について
クライエントがカウンセラーに対して恋愛感情を抱いたり、逆に憎しみや怒りをぶつけることも少なくありません。
心理療法のプロセスにおいて、クライエントが心の中に持っている感情(親などへの重要人物に対する感情)をカウンセラーに向けることを転移と呼びます。
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カウンセリングでの感情転移とは?
カウンセリングの現場において、精神科医やカウンセラーなど治療者に対して、クライエントがまるで子供のような行動や言動をするケースは多いものです。
例えば、クライエントがカウンセラーに依存したり、自分の親に対する感情と同じ感情をカウンセラーに向けたりすることがあり、これを「感情転移」と呼びます。
カウンセラーは、クライエントの転移感情の分析を通して、クライエントの幼児体験や親子関係など、クライエントの心理を理解し、治療に活用していきます。
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陽性転移と陰性転移について|感情転移の種類
カウンセリングにおいて、クライエントの転移感情には陽性転移と陰性転移の2種類があります。
陽性転移の例
陽性転移とは、クライエントがカウンセラーに対して次のような好意的な感情を持つことです。
・信頼
・感謝
・尊敬
・恋愛
・親密感 など
陰性転移の例
また、陽性転移とは逆に、クライエントがカウンセラーに対して攻撃的な感情を抱くことを陰性転移といいます。
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・敵意
・不信
・攻撃性
・憎しみ
・怒り
・猜疑心
・恨み など
クライエントの転移感情が複雑で、甘えの裏に憎しみがあったり、恋愛感情の次に攻撃性があらわれたりすることもあります。
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クライエントの感情転移に対するカウンセラーの対応は?
カウンセリングの初期段階において、陽性転移があらわれることが治療を進展させる働きがあり、クライエント自信に自分の心の内を明らかにさせる勇気と力を与える望ましいことといわれています。
クライエントがカウンセラーに対して恋愛感情を抱くケースも少なくありませんが、性的関係に発展することは望ましくありません。
精神分析学者のフロイトは、恋愛感情の転移は治療への抵抗であると考え、治療者(カウンセラーや精神科医)の倫理として注意しています。
クライエントの恋愛感情表現や誘惑などに対する精神分析に時間がかかることとなって、結果的に治療の進展が妨げられるからです。
カウンセラーとしては、クライエントの転移感情に対して、冷静かつ慎重に対応することが求められます。
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◆この記事は、東京福祉大学名誉学長、立正大学 心理学部元教授の松原達哉先生執筆・監修「臨床心理学図解雑学(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
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